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京都のイベント・料理

時代考証学会 第3回フォーラムin京都       

右京区太秦東映京都撮影所  2013.6  (写真:主として東映映画村)


時代考証学会 第3回フォーラムin京都が東映京都撮影所で行われました。
この会合は、映画やテレビドラマの時代考証に携わる歴史学者らによる時代考証学会が主催し、時代考証の意義や、時代劇の未来への継承・発展を目的とします。 
   

時代劇の蒼蒼たる専門家をお招きし、時代劇のこれまでの取り組み(資産)や、現状を検証し、これからの時代劇のあり方を模索しました。

全国津々浦々、100名の一般参加がありました。私のそばにすわっていた婦人は東京・渋谷から来られたということです。


1.開会挨拶・・時代考証学会 野本禎司

時代劇が京都の地でさかんに作られてきたことや、開催の趣旨説明が行なわれました。

2.映像文化の発信地としての京都の文化と歴史・・京都文化博物館 森脇清隆氏

20世紀に入り、東京が現代劇に、京都が時代劇に分岐していった経緯の説明がされました。歴代「忠臣蔵」の映像の変遷・・セットや撮影の仕方が日々進化していった様子がよくわかりました。


3.京都での山田洋次監督時代劇作品を経験して・・株式会社松竹撮影所 井汲泰之氏

藤沢周平原作「たそがれ清兵衛」の映画のロケにおいて、葬列シーンに1週間費やしたことや、クランクアップのあと秋田へ、リテイク(撮り直し)しに行ったことなど、山田監督の作品へのこだわりが紹介されました。その結果よい作品となり、2002年の興行収入が16億円になり、それ以降年3本のペースだった時代劇映画が活況を呈し、年6本と倍増していった話をされました。


4.京都ヒストリカ国際映画祭の5年間・・東映株式会社京都撮影所 高橋剣氏

国内外の「ロード・オブ・ザ・リング」・「パイレーツ・オブ・カリビアン」など洋画を含めた歴史映画を幅広く紹介。「もののけ姫」、「陰陽師」、「どろろ」、「るろうに剣心」なども歴史映画として捉える。

時代劇の凋落(ちょうらく)に危機感を抱きそ
の背景として、社会の変化を掲げています。例えば、核家族化・少子高齢化・携帯やパソコン、スマートホンの普及によるテレビ視聴の低下など。

そして、時代劇の凋落(ちょうらく)は、凋落ではなく変化の端緒(たんちょ)で、時代劇を新しく構築させるためのサバイバル期であると位置づける。
2007年3月から毎年取り組んでいる「太秦戦国祭り」が活況を呈していることや、今後の課題として異文化の交流を図るために、メディアと文化の攪拌や、京都の時代祭や古典の日を広く知ってもらうパブリシティ(広報活動)の必要性を話されました。


5.昼の休憩・・撮影所の食堂

お昼は中京区蛸薬師・「コック長」謹製の弁当をいただきました。









6.開催地挨拶

  
1)株式会社高津商会 高津博行氏

人間の手で動かせるものを全て小道具と位置づけ、つまようじから戦車まで手掛ける。先代から数えて4代目、90数年の歴史を持つ。先代の曾祖父は大正時代、一条御前の撮影所近くに古道具店を営む。俳優・津川雅彦氏の祖父にあたる牧野省三監督がしばしば、道具を借りにきたという。溝口監督の「利休」では数千万する本物の長次郎の茶碗を所望され驚いた逸話や、小道具を継承していく作り手の減少に憂いを感じ、時代劇の益々の発展を切に願うとの話をされました。

  
2)株式会社業態開発総合研究所 モナト久美子氏

時代劇再生協議会として発足。時代劇の映像文化でもう一度花を咲かせる・時代劇は文化であり、時代劇の産業はそのプラットホームであると位置づける。太秦が栄えることは、日本の文化が栄えることであると熱く語られました。

  
3)東映太秦映画村 山口記弘氏

太秦の広隆寺は聖徳太子に仕えた秦氏が建立したものである。能を確立した世阿弥は秦氏をルーツとする。つまりこの太秦の地は古(いにしえ)より芸能を中心とした地であることを力説。映画村が発足し38年、これまで5900万人が訪れる。小さい子供たちが幼少より時代劇に親しむため、戦隊ものの撮影も推し進める。仮面ライダーVS桃太郎、仮面ライダーVS新撰組など斬新な企画に積極的に取り組んでいます。


  

6.映画「桜田門外ノ変」の映像美術・・東映株式会社 松宮敏之氏

茨木のふれあい広場のロケ地の選定、地割、セットの基礎・足場作りを経て、建物のセットができあがっていく様子がよくわかりました。上杉などの武家屋敷はモノトーンの墨絵風、彦根藩・井伊家の屋敷は目立つように赤くし、屋敷前の堀や紙の素材で雪を表現したさまは、まさに映像美の世界でした。




7.時代劇を関西で制作する意味・・NHKスタジオパーク館長 小林千洋氏

時代劇を構成する3つの核は、「時代劇の心・キャスティング・技術革新の活用」と説く。時代劇の心やキャスティングは、視聴者の様々な思いや思い入れ、時には思い出と重なり合い、その人の人生とも関わる大事な部分と位置づけています。 また、時代劇制作におけるフィクションとリアリティについても言及されました。 

大阪放送局では、時代劇は関西で・・にこだわろうということで、2001年に「聖徳太子」が制作されました。関西で本格的に時代劇が撮られるようになったのがこの年だそうです。

その同じ年に小林氏の制作統括のもと、金曜時代劇「五辯の椿」が作られました。「五辯の椿」の冒頭で、日本橋のむさし屋喜兵衛の別宅が燃えるシーンが紹介されました。喜兵衛の娘・おしの(国仲涼子さん)がじっと崩れゆく寮を見つめます。このシーンのロケで不測の事態に遭遇し、無事切り抜けたエピソードが語られました。小林氏は、大がかりなセットが組めて実際に迫力のある映像が撮れたのは、京都というバックグラウンドがあったからこそ、と当時を振り返ります。 

【「五辯の椿」・・ブルガリアゴールデンチェスト国際テレビ祭・最優秀女優・撮影賞、アジアテレビ賞・最優秀賞】



8.京都の映像文化と産業作り・・京都府副知事 山下晃正氏

立命館大学映像学部が、行政と産学連携が行われている。松竹京都撮影所と本館の二か所に学生の実習場所が設置されている。若い世代の育成が大事である。

映画・映像、マンガ、ゲームなどの豊富なコンテンツの融合により、国際的な競争力をつけていくことが大事。京都クロスメディア・コンテンツ産業特区を申請中で、著作権処理を簡素化させ規制緩和してもらい、クリエーターの方が活動しやすいように風穴をあけたい。また教育分野でのICT化をはかり、教科書を映像化する。それによって潤う企業も出るとコメント。  
また、技術・もの作りに携わる人の育成を促し、現場にきちんとお金が入るシステムの確立が大切であると話されました。


9.時代劇の演じ方、作り方・・俳優 津川雅彦氏

時代劇は作る側も見る側も目利きでないといけない。双方ともよく勉強しないと、良い作品はできないし、見る側も作品の意味がわからない。時代劇は時代劇を熟知している人が作ると時代劇らしくなる。たとえば江戸時代の武士の無礼討ち
・・
武士は町人とけんかしたら、切腹しなければならない・・江戸時代は武士や町人の制度がきちんとしていた。また、江戸の人たちが何を美しいと感じていたか、逆光の障子に映し出される丸まげの女性の話に触れました。

役者の演じ方では、役者は感情を抑えれば抑えるほど、深みが増す。見る側に自由な解釈を与える。時代劇のあるシーンにおいて役者が抑えた怒りをあらわにした途端、時代劇から現代劇に豹変した話もされました。話の随所に長年俳優として培ってきた哲学が垣間見えます。


【津川雅彦さんのお話しをお聞きするのは、2010年10月に行われた「第7回京都映画祭」のクロージングパーティ以来です。】



10.パネルディスカッション・・報告者全員による

★時代劇の心を継承し発展させよう★

制作へのこだわり、リアリティーについて、今後の時代劇のあり方などが討論されました。高橋剣氏は、2005年に陰陽師が作られ、ご存じものからの脱却が図られたことを指摘。

森脇清隆氏は、これからの時代劇は、時代劇でしかできないことを伝える。時代劇でないと描けないものを探すことが大事であると語る。

小林千洋氏は、時代考証の領域を昭和も含めたふり幅に広げたり、ライトノベルではない、骨太な時代劇の書ける作家を育てることが肝要であると語る。映画の町で人材を育成することの大切さを、歴代京都放送局が取り組んでいる立命館大学のNHK講座(放送メディアをテーマとした単位認定型の講座)を例に掲げる。

津川雅彦氏は、時代劇制作において、ものを作ることへの集団創造の楽しさを強調。文化の本質は遊び心を大切にすることであると力説。時代劇を楽しむには劇場に行って、その場の雰囲気に丸ごと浸ることが肝要と語る。 (映写機:祇園会館)



11.総括・閉会挨拶が時代考証学会会長の大石学氏により行われました。明日、二日目は京都文化博物館でアーカイブス(映像資料)を中心とした発表や討論が行われます。


■感想
時代劇制作に関わっているプロの方たちからの専門的な意見や様々な熱い思いに聞き入り、一素人として時代劇の火を絶やさず、さらなる発展を遂げることを願ってやみません。

●シネマの町・大映通り商店街

スーパーの前には6mの大魔神があります。この「大魔神」は昭和41年に大映撮影所で製作された映画で登場して以来地元のヒーロー、守護神として親しまれています。この銅像は今年の3月に設置され商店街のシンボルとなっています。
















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